2月D-pca研究会-新しい輪読が始まる-
ずいぶん前のことだが2月2日(火)はD-pca研究会だった。いつものようにオープニング・ミーティングから始める。困っていることとして日常生活の取り組みが出された。プランとしては新しくカール・ロジャーズ著・畠瀬直子監訳『人間尊重の心理学-わが人生と思想を語る-』創元社の輪読を始める。この2つが出された。
これはロジャーズ最後の著 "A Way Being"の和訳である。その中から第1章「コミュニケーションの意味」を読んでいくことにした。ロジャーズの1964年カリフォルニア工科大学で行われた講演を著者自身が書き綴ったものである。ロジャーズさんの語り口を彷彿させる邦訳である。原題は"Experiences in Communication" である。この方がこの講演の意味をよく表していると思う。
この講演の特徴はコミュニケーションについてロジャーズさんが講演するのではなく、自身が対人援助の体験の中で気づかれたこと、感じられたことを表明するというところにある。ロジャーズはこのことを、
「今日の行動科学の世界ではコミュニケーションついての知識はもっとも重要なものではないのです。人間との関わりに於ける経験的情報、あるいは深く触れ合って得た知識への高い関心が生じています。そこでの知識というものは、言語によって伝達可能な認識的かつ知的な研究成果をお話しするという形を超えた所にあります。(p.5)」 と述べている。
ところがこれが出来るのは少人数の十分にヤリトリが出来る空間で行われるけれどこのような大人数の講演として行うのはきわめて困難である。そのようなことに葛藤されたのだが、結果、ロジャーズはこの方向を選ばれたのである。もっともこの講演は伝統的にデモンストレーションが求められていたということもあったようである。
「私がやりたい事といいますのは実に簡単です。コミュニケーションについて私が学びとってきたきたことを皆さんと共に分かち合いたいのです。それらは、私自身の経験の中から育ってきた個人的な気づきなのです。(p.5)」はとても新鮮である。
このことは私もまさに痛感する。カウンセリングやPCAについて講演を頼まれたとき本当に困ってしまうのである。そこから得られた知識というのは本当に言葉を超えたもので、深く私の体の中から生まれてくるものである。それらを共有することはとてもむずかしい。厳密には共有出来ないのかもしれない。そこを明快に述べられているロジャーズさんの論の進め方はほんとうにおもしろいと思ったし、触発された。同時に私もそれを意識して行ってきたなと改めて思った。
ということで、このような前提の基にこの講演が始まっていく。この先は次回からの楽しみである。
いつものように少人数でじっくり分かち合える充実した時間であった。
次回は、3月9日(火)午後7時半から9時半。場所は当センターです。どうぞ。→ホームページ参照
« 国際エンカウンターグループ-自己とのつながりと他者とのつながり- | トップページ | D-pcaの集い-大悲と人との関係の中で自分を取り戻すひととき- »
« 国際エンカウンターグループ-自己とのつながりと他者とのつながり- | トップページ | D-pcaの集い-大悲と人との関係の中で自分を取り戻すひととき- »
コメント