9月D-pca研究会-人間および生命体の実現傾向-
ずいぶん前のことになるが先月9月13日(火)はD-pca研究会であった。8月は都合により中止になった。今回もオープニング・ミーティングをまず行う。分かち合いとして日常のことが出された。プランとしては継続しているカール・ロジャーズ/畠瀬直子監訳『人間尊重の心理学-我が人生と思想を語る-』の輪読、9月末から10月始めに開催予定のロシアPCA協会カンファレンスでの発表予定について聞いてもらうが上がった。
カンファレンスについてはすでに終了してしまった。内容についてはこの記事で紹介している。
輪読は「第六章人間中心アプローチの形成、三、生命体の志向するプロセス」の節を読み進めていった。(p.112-)。人間中心アプローチ(PCA)とはこれというぐらい基本的な仮説だ。「人間並びにあらゆる生命体に基本的信頼を置くことは実践、理論、研究に於いて明確です。」(p.112)ということになる。
これは私自身もカウンセリングやグループ実践で何度も何度も経験することである。最初はどうなるのかと思うのだがセッションを続けていく内にその人が次第に自己を探求し、気づき、整理し、力を発現させていく、本来の自分を取り戻していく。その人自身に内在する力でもって・・・。このアプローチに出会えてよかったとその醍醐味を味わう体験である。クライエントだけではなく私自身においてもそうであった。
ここではそのもっとも根本的なものについて言及されている。「特にその実現傾向は挫折しゆがむことはありますが、その生命体を破壊することなしにはそれを奪い去ることは出来ません」(p.112)として日の当たらないところに置かれたジャガイモの発芽を例にして述べられている。地下室の条件のよくないところでもひょろひょろになっても芽が発芽し、窓から差し込む弱い光に向かってそれを続けているのである。これはとても有名な例である。
そうしてこれは彼の臨床経験にも当てはまると述べられ、「恐ろしくゆがんでしまった人生を持つ来談者との面談」や「州立病院にもどってきた人々との面接」での出来事が述べられている。(p.113)
「これらの人々は異常で、ゆがみ、人間らしくない人生を展開させてしまったひどい状況にいます。けれども、彼らの中にある基本的志向は信頼することが出来ます。彼らの行動を理解する手がかりは、彼らは彼らに可能な方法で成長と適応に向かってもがいているということです。健康な人間には奇妙で無駄と思えるかも知れないけれど、その行為は生命が自己を実現しようとする必死の試みなのです。この前進的傾向が人間中心アプローチの基底なのであります」(p.113)。
ここはまさに心にじーんと響く表現であるし事実である。私にはこの「もがき」という言葉がまさにぴったりくる。まさにあきらめることのない傾向なのである。これを毎回実証するのがカウンセリング実践だと思う私である。
ところで、ここで次第に一つの違和感が私の中に育ってもいる。「成長」、「実現傾向」という言葉である。仏法を聞けば聞くほどこの言葉には違和感が出てきている。この言葉は二つともどうも西洋心理学っぽい言葉なのだ。前進が好きなのである。けれども前進でも後退でもない。生きるでも死ぬでもない。私達はまさに弥陀から願われた存在なのである。本当に深いところでそのままでよいのである。煩悩具足の身そのままなのだ。神ながらという言葉もこれに関係している。そんな思いも芽生えてきている私である。
ここに書いた私の気づきは毎回、毎回行われるこの研究会での真摯なヤリトリから生まれてくる。ほんと貴重で充実した場をいただいている。
文献:カール・ロジャーズ/畠瀬直子監訳『人間尊重の心理学-我が人生と思想を語る-』 創元社 1984 原題:A Way of Being
次回は、10月18日(火)夜7時半から9時半である。楽しみである。
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