7月D-pca研究会-共感的理解のより核心的で広い意味-
先日7月11日はD-pca研究会。月例で進めている。いつものようにオープニング・ミーティングで「困っていること」、「やりたいこと」、「分かち合いたいこと」を出し合う。それぞれに今思っている事が出された。「やりたいこと」では継続している輪読をしたいというプランが出た。
読んでいるところはカール・ロジャーズ著・畠瀬直子監訳『人間尊重の心理学-わが人生と思想を語る-』創元社の第七章「共感-実存を外側から眺めない係わり方」である。今回はいよいよ「結び」の節である。(p.150-152)。
ここでは共感について少し違った意味から述べられていく。よりそのエッセンスが語られることになっている。
1.共感は自己自身を認め大切にする態度を育てる。
2.共感的に聞いてもらえる体験は自己に対してより正確に耳を傾けさせ、自己の全身的体験の意味をより共感的に見つめさせる方向に向かわせる。つまり自己探求を進めていくということである。
そして、3.自己理解自己承認の増大はより自己概念に対して新しい側面への気づきを導いてくことになる。つまり、自己はより自身の経験、つまり感情や情動との距離を縮めていく。より一致した方向に向かっていくことになる。
そうしてこの一致した態度はより有能なセラピストの態度にもつながっていくのである。自己の成長、一致は、人にたいしてより援助的になっていくと言うことでもあるのだ。
次にさらに広い意味が述べられていく。共感は人への援助的態度であることには間違いはないが、それが唯一なものではないということ。唯一だという印象を与えたくないということである。
それは、他の二つの条件、「一致」、「無条件の肯定的配慮」とが相互に関係しあって醸し出されていくことである。つまり、成長促進の3つの核心条件がひとつのハーモニーとなって醸し出されていくことなのである。
日常生活、配偶者や恋人との関係、師弟関係、労使関係、仲間関係では「一致」が一番重要な要件になる。その人がその人としてしっかりいる。「あなたはここにいるのだな」という感じを起こさせる大事な要件だということになる。日常生活においてはここが重要になる。居所のハッキリしていることが大事なことになるのだ。
そして他の状況、つまり、母と子、治療者と寡黙な精神病患者、といった言葉をぬきにした状況では思いやり(無条件の肯定的配慮)が大事になる。
さらに誰かが傷ついていたり、困っていたり、混乱していたり、不安・孤独・恐怖をいだいていて自分の存在価値がわからなくなっているときはこの「共感的理解」がより重要な要件になっていく。といってもこの共感的理解は他の二要素、「一致」、「無条件の肯定的配慮」も同時に所有していることが必要になる。
そこから解明と治癒が生じる。その深い理解の中でもっとも重要な賜物(most precious gifts)が伝わっていくと言うことにもなる。
とても重要で奥深いことが語られている。これはかねがね私が感じたり、思ったりしていることの確認にもなった。特に日常生活では一致がもっとも重要になるというのはその通りだと思う。これらのことについてはより深い体験を通した学びが必要になってくる。
今までどおり、1人1人の体験的な学びと照合しながらと話し合いとなっていった。意義深い時間だった。
ここでひとまずこの章の輪読は終了した。次回は、西光義敞『暮らしの中のカウンセリング』有斐閣の後半を読んでいくことになった。カウンセリング場面というより日常生活において育ち合う人間関係をどう展開していくかについて書かれている。これまた楽しみである。
次回は8月8日(火)午後7時半から9時半である。場所は当センター。このサイトも参照して下さい。
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